サンちゃんとリーテ（日々のつぶやき）

「ゆういぎさんぽ（その肆拾参）」（終）

　

　　　夜…
　　　　ひとり　ひそかに　
　　　　　しのびよるかげ
　　　　ひとめ　きにしつつ
　　　　　ちょっとき機　ひろう

　

　
　　　ひろいにきたのは、○○○です　↓↓↓

「ゆういぎさんぽ（その肆拾壱）」

　

　　　かくして
　　　「しようほうほうふめい」の
　　　デンジャラス機械は
　　　道中に“ふほうとうき”されてしまいました…

　　　“ちよっとき機”は
　　　「持たず」「つかわず」「持ち込ませず」…

　　　やっぱり
　　　時間通りに時間が刻まれる生活が
　　　平和で安心〜〜♪
　
　　　だそうです

　

「ゆういぎさんぽ（その肆拾）」

　

　　　なーんだ
　　　ちょっとき機が
　　　作動したのじゃなくて

　　　サンドロが
　　　“ちょっとき”中の“ふり”をして
　　　からかっただけだったのか〜〜

　　　使い方のわからなかった“ちょっとき機”が
　　　　作動できるようになったのではないのは
　　　　　ちょっとざんねんだったけど…

　　　使い方のわからないまま“ちょっとき機”が
　　　　作動したんじゃなくて
　　　　　安心したよ

　

「ゆういぎさんぽ（その参拾玖）」

　

　　　“ちょっとき機”のスイッチが入ってしまったの？
　　　そんでもって
　　　サンちゃんの時間がとまってしまったの？
　　　時間を貯める“ちょっとき”がはじまってしまったの？
　　　でも、いったい何分分のちょっときが始まってしまったの？
　　　サンちゃんは元に戻れるの？

　　　もしも機械の誤作動だったらどうするの？
　　　やばいよ
　　　やばいよ
　　　どうしよう
　　　どうしようっっっっ

　

「ゆういぎさんぽ（その参拾捌）」

　

　　　さっきまで　超てきとうに
　　　“ちょっとき機”をさわっていた
　　　サンドロ…

　　　急に止まって
　　　うごかない…

　　　ぴくりとも
　　　うごかない…

　　　どういうこと!!??　
　　　どういうこと!!??　

　

「ゆういぎさんぽ（その参拾七）」

　

　　　サンドロ
　　　「どれ、かしてみろや
　　　　こんなものは
　　　　テキトーに押してみりゃいいんだ」

「ゆういぎさんぽ（その参拾陸）」

　

　　　サンドロ
　　　「ま、“1日分の時間”を
　　　　ばあさんに盗られちまったらしいけど
　　　　めずらしいこと山ほどあったし
　　　　超うめーもん食えたし
　　　　おれにとっては
　　　　けっこう“ゆういぎなさんぽ”だったぜ？　(▼▼)」

　　　カンちゃん
　　　「そうですよね〜
　　　　とっても“ゆういぎ”でしたよね
　　　　ただ、すでに“さんぽ”じゃぁ
　　　　なくなってると思いますけどね…(^-^;」　

　

「ゆういぎさんぽ（その参拾伍）」

　

　　　マニュアルを取りに来たら…

　　　「ゆういぎ茶屋」は消えていた

　　　1本の細い道だけが
　　　そこに「ゆういぎ茶屋」があったことを示していた

　

「ゆういぎさんぽ（その参拾肆）」

　

　　　“ちょっとき機”
　　　使い方は超かんたん

　　　ユーザー登録は
　　　さわるだけのかんたんワンタッチ

　　　“ちょっとき”するときは
　　　時間を入れて　スタートを押す

　　　“ちょっとき”した時間をつかうには
　　　右のボタンを押す

　　　それだけのはずなんだけど……

　　　あれ…
　　　スイッチは…？

　
　

「ゆういぎさんぽ（その参拾参）」

　

　　　サンドロ
　　　「いったい今日は何日なんだ？
　　　　いま何時なんだ？
　　　　俺たちの時間はどうなったんだ？」

　　　カンちゃん
　　　「そうですよねぇ
　　　　たぶん…なんですけど
　　　　とられたのは
　　　　1日だけじゃないでしょうかねぇ
　　　　クロちゃんの時間は
　　　　とられてないんじゃないですかねぇ」

　
　

「ゆういぎさんぽ（その参拾弐）」

　

　　　おばあさんのほうからみると
　　　みんなの時間がとまっているように見えたけど
　　　みんなのほうからすると
　　　時間はとまってはいない…
　　　
　　　ただ、おばあさんが
　　　目にもとまらぬ速さで動いて
　　　いなくなっただけ…
　
　　　トキは
　　　おばあさんの“ちょっときき”に蹴りを
　　　いれられそうだったのに
　　　おばあさんは消えてしまって
　　　スカになった
　　　
　　　サンドロは
　　　きがつくと“ちょっときき”を持っていた
　　　
　　　リーテは
　　　もたれていたおばあさんが消えて
　　　前のめりにたおれかけていた
　　　
　　　ブルーマは
　　　手帳に書いた覚えのない文字が
　　　書いてあることに気がついた
　　　それは
　　　おばあさんが書き残していった
　　　手紙だった

　
　
　

　　　みなさんへ

　　　本日はありがとうございわした

　　　ときはかねなり
　　　かねにまさるなり

　　　またいつか
　　　おあいしわ（ま）しょう

　　　それでは
　　　ゆういぎなおじかんを…

　　　　　ごきげんよう

　　　　　　　ゆういぎばあ

　

「ゆういぎさんぽ（その参拾壱）」

　

　　　おばあさんは
　　　“マイちょっとき機”を起動した
　　　
　　　“マイちょっとき機”には
　　　おばあさんの時間が
　　　たっぷり“ちょっとき”されている
　　　
　　　プレゼントの“ちょっとき機”は
　　　ていねいに終了してから
　　　サンドロの腕にそっと渡したおばあさん

「ゆういぎさんぽ（その参拾）」

　

　　　“ちょっとき”した時間をつかうために
　　　こっちのボタンを
　　　ぽちっとすると
　　　みなさんの時間では
　　　ほんのいっしゅんのあいだに
　　　わしが1分自由にうごけるんでございわす
　　　…
　　　と言ったところで
　　　もう　きこえわせんね…

「ゆういぎさんぽ（その弐拾玖）」

　

　　　…あれ？
　　　店内を
　　　ふらふら散策していた
　　　クロちゃんとトキが
　　　すごい勢いで
　　　やってくるぞ？
　　　どうしたんだろう…

　
　

「ゆういぎさんぽ（その弐拾捌）」

 

　
　　　　1分たったら
　　　　おばあさんは動き出した

　
　

「ゆういぎさんぽ（その弐拾七）」

　

　　　ゆういぎばあ
　　　「使い方はマニュアルに　書いてありわすので
　　　　あとでゆっくり　お読みくださいわせ　はぁ」

　　　ゆういぎばあ
　　　「“ちょっとき”するときは
　　　　何分“ちょっとき”するか入力して
　　　　スタートを押すんです
　　　　たとえば、はぁ…
　　　　貯っ時1分…と設定して…
　　　　このぼたんを…

　　　　………
　　　　………
　　　　………
　　　　………
　　　　………
　　　　………
　　　　………　

　
　
　
　

「ゆういぎさんぽ（その弐拾陸）」

　

　　　ユーザー登録は
　　　さわるだけのかんたんワンタッチ

　　　年会費は無料
　　　“貯っ時”した時間の
　　　0.1％時間を　支払うしくみ

　　　「貯っ時機（ちょっときき）」はべんりだけど
　　　時間の速度が変わるので
　　　ひとりのときに使うのが　ふつうらしい

　　　

　　　ゆういぎばあ
　　　「使い方はマニュアルに書いてありわすので
　　　　あとでゆっくり　お読みくださいわせ　はぁ」

　　　サンドロ
　　　「そんなもん　めんどくせぇよ
　　　　いま　ここで　つかってみせてくれ」

　

「ゆういぎさんぽ（その弐拾伍）」

　

　　　これは「貯っ時機（ちょっときき）」といいわす
　　　はぁ
　　　時間をちょっと　とっておいたり
　　　ちょっと　引き出したりできるんです
　　　はぁ

「ゆういぎさんぽ（その弐拾肆）」

　

　　　「ちょっときき」
　　　とりあえず　武器ではないらしい…

　

「ゆういぎさんぽ（その弐拾参）」

　

ゆういぎばあさん
　　　「じゃ　じゃ　じゃあ　
　　　　お、おわびに
　　　　プレゼントをさしあげわすので
　　　　それでかんべんしてくださいわせ…
　　　　はぁ
　　　　ゆういぎ茶屋のオープン記念で
　　　　おくばりした品で　たいへんこうひょうでした　はぁ
　　　　あっちのへやにあるので
　　　　とってきわす…」

サンドロ「いやまて
　　　　どこにあるのかせつめいしろ
　　　　おい　ブルーマ　
　　　　はなしをきいて　とってこい」

「ゆういぎさんぽ（その弐拾弐）」

　

　　　「ゆういぎ茶屋」では
　　　お金を　はらわなくてもいい
　　　でも…
　　　お金ではなくて、時間をはらう
　　　お金よりも　ずっとずっと価値のある
　　　ゆういぎな時間をはらう…

　　　「ゆういぎ茶屋」で払われた時間は、
　　　すぐに、ただちに、本部に送られる
　　　本部に集まってくる時間は蓄財…じゃなくて、
　　　「蓄時間」され
　　　そして活用される

「ゆういぎさんぽ（その弐拾壱）」

　　　手荒な
　　　　まね…

　

「ゆういぎさんぽ（その弐拾）」

　

　　　おばあさんは
　　　はたらきもの

　　　だけど
　　　若い頃のように
　　　速くは動けない

　　　ゆっくりお茶を入れて
　　　ゆっくりはこぶ
　　　ていねいに　ていねいに
　　　ゆっくり　ゆっくり…
　
　

「ゆういぎさんぽ（その拾玖）」

 

　　　仮に、
　　　くろちゃんの言っていることが
　　　正しいのだとすれば…

　　　ぼくたちのじかんが　
　　　…それも24時間近い時間が…
　　　なんらかの理由で
　　　消えてしまった…ってことになりますね…

　　　いや　…ぬすまれた…
　　　と、言ってもいいのかもしれませんね…
　　　（カンちゃん・談）

 

　

「ゆういぎさんぽ（その拾捌）」

　

　　　公平っていうのは
　　　みんなに同等っていうこと
　　　かたよらないこと
　　　不公平ではないこと…

　　　かりにもし
　　　みんなに同じ量をあたえると
　　　公平になるか…っていうと
　　　そうともかぎらない
　　　同じ量では不公平だっていう主張が
　　　かならず出てくるよね〜〜

「ゆういぎさんぽ（その拾七）」

　

　　　たのしい時間は
　　　すぐ過ぎるよね

　　　めずらしいお店
　　　めずらしいおばあさん
　　　めずらしいお花
　　　おいしいおしょくじ
　　　たのしい仲間
　　　あ〜おもしろかった

　　　たのしい時間は
　　　あっというまだね

「ゆういぎさんぽ（その拾陸）」

　

　　　すわってくつろげる
　　　超高級エレベーター
　　　
　　　ぼたんを押してもうごかない…
　　　
　　　うごかないエレベーターは
　　　くらくて　せまいただのハコ…
　　　
　　　故障しちゃったのかな〜？
　　　超高級エレベーター……

「ゆういぎさんぽ（その拾伍）」

　

　　　おきゃくさんは
　　　くろちゃんと
　　　トキだった

 

　　　クロウサギのクロウんちは
　　　るすだったのかな？

　　　それとも　また
　　　なにかトラブルとか？

　

「ゆういぎさんぽ（その拾肆）」

　

　　　階下からおばあさんの
　　　声がきこえる…

　　　「おすきな　おせきに
　　　　はぁ　どうぞ　どうぞ
　　　　いま　お茶を　おもちしわす」

　　　ゆういぎ茶屋に
　　　またおきゃくさんがきたみたい

　

「ゆういぎさんぽ（その拾参）」

　

　　　下をのぞいているブルーマのあたまの上には
　　　「???」はてながいっぱい

　リーテ　「ブルーマ〜〜」
　　　　　　どうしたの？」

　ブルーマ「お花が増えているの」

　リーテ　「お花が増えているとおかしいの？」

　ブルーマ「うーん。
　　　　　　1日花だからねぇ…」

　リーテ　「1日花ってなぁに？」

　ブルーマ「朝顔みたいに1日で枯れるお花のことだよ」

　リーテ　「1日花が増えてるいるとおかしいの？」

　ブルーマ「さっきはかたいつぼみだったからねぇ」

　リーテ　「かたいつぼみがお花になるとおかしいの？」

　ブルーマ「うーーーん。
　　　　　　でも…げんに咲いているんだよねぇ
　　　　　　おかしいなぁ…」

　リーテ　「1日に何回も咲く1日花なんじゃないの？」

　ブルーマ「う〜〜〜〜〜〜〜〜ん。」

「ゆういぎさんぽ（その拾弐）」

　

　　　展望ルームにとうちゃく

　　　それぞれの興味に直行
　　　それぞれの「ゆういぎ」タイム

　　　

　　　リーテとカンちゃんは
　　　見慣れた風景をめずらしい視点からながめる
　　　スーパービューな「ゆういぎ」

　　　ブルーマは
　　　振り子の軸が通っている床の穴に
　　　興味しんしん
　　　さっきいた部屋を上から見渡せる
　　　タンキュウ「ゆういぎ」

　　　おなかがペコペコのサンドロは
　　　テーブルに直行
　　　も〜〜〜〜〜〜
　　　と〜〜っても「ゆういぎ」

　　　よかった　よかった

「ゆういぎさんぽ（その拾壱）」

　

　　　エレベーターは
　　　するするとしずかに上昇
　　　スウッと停止
　　　乗り心地は
　　　超高級エレベーター

　　　ドアが開く前に
　　　ちょっと電球がちかちかしたけど
　　　そのほかはカンペキ

　

「ゆういぎさんぽ（その拾）」

　

　　　すわれるエレベーターなんてあるんだね〜
　　　すごいねぇ
　　　超高級ホテルにだって無いよね
　　　きっと

　　　展望レストランだってさ
　　　たのしみだね

「ゆういぎさんぽ（その玖）」

　

　　　代価を求めないレストランなんてあるわけない
　　　きっとおおきな
　　　「したごころ」があるにちがいない

「ゆういぎさんぽ（その捌）」

　

　　　なんだか今日は
　　　待つことばっかりだなぁ

　　　んじゃ　おれ
　　　ちょっと　ゆういぎにねてるわ
　　　カレーがきたら
　　　おこしてくれ
　　　よろしくな

　　　くか〜〜

「ゆういぎさんぽ（その七）」

　

　　　今日はおれが注文するからな
　　　えーとぜんぶ4人前で
　　　スープとカレーと
　　　サラダと焼きたてパンと
　　　ケーキとお茶と…

「ゆういぎさんぽ（その陸）」

　

　　　「おすきな　おせきに
　　　　はぁ　どうぞ　どうぞ
　　　　いま　お茶を　おもちしわす」

　　　ゆういぎ茶屋は
　　　意外と広い
　　　おおきな振り子が
　　　ゆっくり　まわる　
　　　ゆっくり　ゆっくり
　　　時をきざむ
　

 

「ゆういぎさんぽ（その伍）」

　

　　　ゆういぎ茶屋と看板のある
　　　たてものに入ってみると
　　　そこには
　　　おばあさんがひとり
　　　「おまちしておりましたはぁ
　　　　さぁさ　どぅぞ。どぅぞ。」
　　　ていねいに
　　　えがおで（たぶん）
　　　むかえいれた
　

「ゆういぎさんぽ（その肆）」

　

　　　《ゆういぎ茶屋》

　　「ゆういぎ　ゆうえき　じゅうじつ　まんぞく
　　　すてきな香りの
　　　おいしいお茶をごよういしています

　　　おいしいお菓子を焼いて
　　　あなたのおこしをおまちしています」

　　　

　　　うお〜〜♪
　　　なんてタイムリーなんだ
　　　ゆういぎさんぽ中に
　　　ゆういぎ茶屋だとよ

　　　

　　　え゛〜〜〜〜〜〜っっ
　　　タイムリーすぎて
　　　怪しさますます倍増ですよ〜〜
　　　やめときましょうよ〜〜
　　　ただじゃないとおもいますし〜〜

　　　何いってんだ
　　　さっ　いくぞっ

 

 

　

「ゆういぎさんぽ（その参）」

　

　　　なにかたてものみたい…

　　　でも、こんなところに
　　　たてものなんて
　　　建ってたっけ？

　　　うわ〜〜
　　　みるからにあやしげですね〜〜
　　　ほんとに　いってみるんですか？

　　　あたりまえよ
　　　なんか食いものがあるかもしれねーじゃねーか
　　　それにあやしいにしろ
　　　あやしくないにしろ
　　　あんなもんほっとけるか
　　　これこそ、ゆういぎさんぽってやつだ

　

「ゆういぎさんぽ（その弐）」

　

　　　ここまでおさんぽしてくると
　　　行きたい場所がそれぞれを呼ぶ
　　　…

　　　トキとクロちゃんは
　　　せっかくなので
　　　すこしあしをのばして
　　　西の谷のクロウサギのクロウおやこに
　　　会いにいくことにした

　　　ブルーマは植物のようすを
　　　みっちりしっかり見ながら
　　　てんけんさんぽ

　　　カンちゃんは旬の山菜を
　　　ぎんみ採取しながらの
　　　さんさいさんぽ

　　　みんなみーんな
　　　ゆういぎさんぽ

　　　ぼくは　おさんぽじたいが
　　　たのしいから
　　　ゆういぎきわまりない

　　　サンちゃんは
　　　おなかがすきすぎて、いまは
　　　ゆういぎどころじゃないみたい…　
　
　

「ゆういぎさんぽ（その壱）」

　<<<まえのおはなし（［24］たわいのないこと《11話》）をみる
　

　　　リーテはかんがえた
　　　ゆういぎさんぽの
　　　ゆういぎってなんだろう？

　リーテ　「ゆういぎってなに？」
　サンドロ「いぎがあるってことだ」

　リーテ　「いぎがあるってなに？」
　サンドロ「かちがあるってことだ」

　リーテ　「かちがあるってなに？」
　サンドロ「かちがないことじゃないってことだ」

　リーテ　「かちがないことってなに？」
　サンドロ「むだってことだ」

　リーテ　「むだってなに？」
　サンドロ「むえきってことだ」
　リーテ　「むえきってなに？」
　サンドロ「えきがないってことだ」
　リーテ　「えきってなに？」
　サンドロ「やくにたつってことだ」

　　　………そっか。
　　　じゃあ　「ゆういぎさんぽ」は
　　　「やくにたつさんぽ」ってことだ